ジェンダー平等と固定観念について子どもたちにどう話すべきか

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2025年6月27日

家庭、教室、地域社会などで年齢に応じた会話をはずませるためのヒント、ツール、実例

2025年5月13日付

ほとんどの子どもは字が読めるようになる前に、男の子は強く女の子は弱いと教えられます。ジェンダーに関する固定観念と、男の子であることの意味、女の子であることの意味は、ベルギーに住む男の子であろうとガーナに住む女の子であろうと、世界中いたるところで認識されています。

子どもは3歳までに固定観念を吸収し始めることが研究で明らかになっています。10歳になる頃には、男の子は自分をリーダーとみなす傾向を持つ一方で、女の子は自分の能力に限界があると思い込みます。ある調査によれば、10人中6人の男の子が「男子は当然、女子よりスポーツが得意」と話し、14歳までに、スポーツをやめる女の子の割合は、男の子の2倍になります

こうした価値観は、若者の選択や夢、期待に影響を及ぼします。子どもたちは家族、メディア、学校、社会からヒントを得ます。どんなおもちゃで遊ぶか、どんな話を聞くか、大人がどんなジェンダーの役割を果たすのを見るかなど、それらすべてが少年と少女が何を「普通」だと思うかに影響を与えます。

そのため、ジェンダー平等や固定観念に関する会話は早い時期に始める必要があります。とはいえ、多くの大人はどのように始めればいいのかわかりません。

ジェンダー平等とは?

ジェンダー平等とは、女性、男性、少女、少年、さらにはノンバイナリーやトランスジェンダーを表現または自認する人など、あらゆるジェンダーの人々が平等な権利、責任、機会を有するという考えです。これは、すべての人が同じでなければならないということではなく、一人ひとりの権利と尊厳が平等に尊重されるべきということです。

現実的には、女性や少女が男性や少年と同じように教育、仕事、指導的役割、意思決定にアクセスできるようにするという意味です。また、育児・介護などの無償ケア労働を家族の間で認識し、ジェンダーに関係なく公平に分担するということでもあります。

しかしながら、今なお男女平等は実現しておらず、世界中で平等を達成するのに、ほぼ300年かかる見込みです。ジェンダー平等は単なる公平性の問題ではなく、基本的な人権であり、平和で持続可能、かつ繁栄した社会にとって大変重要です。

教師として、生涯若者の福祉と育成に関心を持ち続けるアジザさん。2022年インドネシア東ジャワ州にて。写真:UN Women/サトゥ・ブミ・ジャヤ
スマホを使う10代の若者。2022年タイにて。写真:UN Women/ガガン・タパ・マガル
カエリチャに住むヤムケラさん(14)。カエリチャでの日々の暮らしは貧困、HIVとエイズ、限られた社会インフラとの闘いです。それでも、ヤムケラさんはグラスルーツサッカーのSKILLZストリートチームでプレーすることによって、困難と闘っています。SKILLZストリートチームはサッカーの力を活用して若者を教育し、鼓舞し、動員する組織です。「サッカーのおかげで大きな自信を持ちました。自分の将来がどうなるかわかるからです。ポジティブで安全な側にいる自分を誇りに思います」。2016年南アフリカにて。写真:グラスルーツサッカー/カリン・シェームブルーカー
 
モルドバのキシナウで子どもと料理をする父親。写真:UN Women/レネ・エフェンディ
 
スポーツを社会変革とエンパワーメントの強力なツールと捉える、UN Womenのプログラムに参加するブラジルの若者リーダーたち。写真:UN Women/ロザンナ・フラガ
洗濯物を一緒に干す父親と娘。2023年チュニジアにて。写真:UN Women/セブリーヌ・サジュ

1. ジェンダー平等について話し合いましょう – 難しい話題だと敬遠しないで

定義が明らかになった今が、話をする時です。ジェンダー平等、女性の権利、いまだに存在する障壁に関する会話は、きわめて重要です。子どもたちと公平性、正義、平等について率直かつ正直に話せば、子どもたちが世の中を理解するのに役立ち、良い方向に変えていこうという意欲を起こさせます。

こうした会話は形式ばったり台本を用意したりする必要はなく、本を読んでいる時、映画を見ている時、家事やルーティーンをこなしている時など、ふとした時に始めます。大切なのは、子どもたちが周りで目にするものに気づき、疑問を持つよう手助けすることです。

このようにしてみましょう

子ども向けの本や映画を選び、一緒にじっくりと考えてみましょう。作品にジェンダー・ステレオタイプ(ジェンダーに関する固定観念や思い込み)が取り上げられていることを必ず確認してください。昔のアニメ映画を選べば、助けを必要とするプリンセスなど、登場人物が昔ながらのジェンダーによる役割を担っていることが想定されます。子どもに次のように聞いてみましょう。

  • 主な登場人物は?
  • 誰が受け身で、誰がより積極的?
  • 行動するのは誰で、物語を進めるのは誰?
  • より公平にするためにはどこを変える?

慣れ親しんだ物語を別の切り口で楽しみたい方は、現代の世界のおとぎ話を集めた『寝ていないで目覚めなさい』をご覧ください。100人を超える語り手が綴ったこの28の物語は、勇気、優しさ、そして少年と少女が何になれるかについて考える、新しい方法を提案しています。

2. 言葉に気をつけましょう

私たちが使う言葉、特に子どもに対して使う言葉は、子どもの自己や他者に対する見方を形作る可能性があります。「男の子は泣いちゃだめ」、「彼女は男勝り」、「彼は女の子みたいに投げる」といった言葉は、一見無害に思えるかもしれませんが、ジェンダーについての思い込みを強くします。

そのため、ジェンダー平等を育むためにはジェンダーによる役割についての会話を早いうちから始め、取り組むことが欠かせません。

包括的でエンパワーするような言葉を使いましょう。見た目や体力だけでなく、子どもたちが努力したことをほめましょう。可能であれば、ジェンダーニュートラルな職業名を使うようにしましょう。例えば、消防士ならfiremanではなくfirefighterを、議長ならchairmanではなくchairを使いましょう。

このようにしてみましょう

単語言い換えゲームをしてみましょう。子どもに次のように聞いてみましょう。

  • 「男の子は泣いちゃダメ」はどう言い換えられる?
  • 「男勝り」のほかに、責任を引き受ける少女を表現する言葉は何?

前向きな言葉のポスターを作り、家や学校に貼りましょう。例えば

  • 「男勝り」を「自信がある」に言い換える
  • 「男らしくしなさい」を「諦めないで」に言い換える
  • 「男なら泣くな」を「本当の強さとは自分の感情を表に出すこと」と言い換える

3. 家族全員で家事を分担しましょう

ジェンダー平等を教える最も強力な方法の一つが、行動を通して教えることです。子どもたちは、料理をするのは誰か、掃除をするのは誰か、誰に決定権があるかなど、家庭で誰が何をしているのかをわかっています。家事が公平に分担されていれば、みんなが貢献すること、そして、誰の時間も大切だ、というメッセージが伝わります。

世界的にみて、女性は男性の約2.5倍以上の無償のケア労働と家事を行っています。この不均衡は幼いころから始まり、女の子は男の子よりお手伝いを期待されることが多くあります。しかし、そうである必要はありません。家事を分担すると生活スキルが高まり、子どもたちの自信を育み、他者の時間や努力を尊重するようになります。家事を罰にするのではなく、お互いを気遣い、協力するための方法にしましょう。

このようにしてみましょう

  • 家族の役割分担表を作り、週ごとに担当を交替する
  • 食卓の準備、洗濯物の片付け、おもちゃの片付け、弟や妹に本を読んであげるといったことも含める
  • 週の終わりに「新しくできるようになったことは何か」を振り返る

4. 実生活でのロールモデルからインスピレーションを得ましょう

子どもたちはお手本から学ぶので、ジェンダー・ステレオタイプに異を唱え、平等を支持しているロールモデルを見せましょう。アン・ハサウェイさんマララ・ユスフザイさんのように、演説でインクルージョンを訴える著名人や活動家、あるいはジョン・レジェンドさんのようにケアとアライシップ(弱者支援)の手本となる男性について話しましょう。

トルコでの「生理の貧困」との闘いからアフガニスタンの若い女性に対する教育支援まで、世界中で活躍するUN Womenの若い活動家たちの取り組みを子どもたちに紹介しましょう。

最後に、今日私たちが生きている世界を大胆で聡明な女性たちが形作ってきたことを子どもたちに理解してもらうよう、女性の権利の歴史の重要な瞬間を子どもたちに一つひとつ教えましょう。

このようにしてみましょう:

家庭や学校で「ロールモデルの壁」を作りましょう。ジェンダー・ステレオタイプを打ち破ろうとする人を毎週追加し、子どもたちが得た刺激や気になる点を書き加えましょう。

5. オンライン上の安全と尊重について話し合いましょう

子どもたちは成長するにつれて、友人関係、学習、遊びのかなりの部分をオンライン上で行うようになります。しかしながら、オフラインに存在するジェンダー・ステレオタイプや不平等がデジタル空間に反映されることがよくあります。少女、女性、ジェンダーの多様な人々は デジタル空間で嫌がらせ、いじめ、虐待に遭いやすいものですが、固定観念に挑む場合はなおのこと危険性が高くなります。

加えて、マノスフィアをはじめとする有害なオンラインコミュニティは、少年や若い男性を対象に、女性を劣った存在として描き、ジェンダー平等は少年の成功を脅かすものと位置付ける女性蔑視的なコンテンツを広めています。

こうした論調は暴力を正常化し、否定的なジェンダー・ステレオタイプを強める可能性があります。子どもたちや10代の若者が共感や批判的な考えをもってオンライン空間を利用できるように手助けし、彼らと何でも話すことがオンラインとオフラインの安全のために不可欠です。

このようにしてみましょう

一緒にメディア探偵になってみましょう。あなたの子どもが好きな動画や投稿、もしくは流行っている動画や投稿をいくつか取り上げます。そして、子どもに次のように聞いてみましょう。

  • 「この人は少年、少女、男性、女性について何と言っている?」
  • 「このメッセージは尊敬、平等、親切を促している?」
  • 「このメッセージで得をするのは誰?また、害を受けるのは誰?」

6. スポーツをする女性と少女を応援しましょう

スポーツは体力を養い、自信を育み、生活スキルを培いますが、14歳までに少女は少年の2倍の割合でスポーツから離れていきます。少女たちは長い間、スポーツのキャリアで存在感を示し支援してもらおうと奮闘してきましたが、スポーツのエコシステムは急速に変化しています。体操のシモーネ・バイルズ選手とアリー・レイルズマン選手は力とはどういうものかを再定義し、サッカーのマルタ・ビエイラ・ダ・シルバ選手はすべての女性と少女の平等を呼びかけ、ジェニ・エルモソ選手は性差別に取り組むなど、女性アスリートたちがスポーツ界の変革を進めています。

少女が競技の場に立つ自分自身の姿を見ること、また少年がチャンピオンになった女性を見ることによって、誰にでも可能だと少年や少女が信じることがらが新たに形作られます。

このようにしてみましょう

  • 女性たちの試合を一緒に見ましょう
  • 少女に新しいスポーツをするように勧め、その成果だけでなく努力を称えましょう
  • 子どもたちに、スポーツ競技を変えた女性アスリートの物語を調べて共有するように促しましょう。その女性アスリートはどんな障害に直面し、それをどう乗り越えたでしょうか?

もっとアイデアを知りたい人は以下のサイトをご覧ください。

(翻訳者:本多千代美)

(原文)
https://www.unwomen.org/en/articles/explainer/how-to-talk-to-kids-about-gender-equality-and-stereotypes

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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