脱ステレオタイプ同盟(Unstereotype Alliance)が1周年を祝い、「脱ステレオタイプ:ジェンダーを超えて~目に見えないステレオタイプ~という報告書を出版

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2018年8月10日

カンヌ―脱ステレオタイプ同盟は、ジェンダー平等と女性の権利のための国連機関、UN Womenが立ち上げ、業界が中心になって進められている取り組みで、広告によってはびこる有害なステレオタイプを一掃することを目指しています。同同盟はカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルでその1周年記念を祝い、主な成果を発表しました。同盟はまた出版されたばかりの「ジェンダーを超えて脱ステレオタイプを実現―目に見えないステレオタイプ」に書かれた分析を紹介しました。新報告書は様々な文化の背景に現れるジェンダーとそれと交差するステレオタイプの複雑さに早急に焦点を当てなくてはいけないと訴えています。IPG(ニューヨークの広告持ち株会社)が制作した「問題は問題を見ないことだ」というYouTube(https://www.youtube.com/watch?v=ngtO-efwLlw)上の映像は業界にその広告からステレオタイプをすぐ取り除くよう促しています。

UN Womenの事務局長で脱ステレオタイプ同盟の結成を呼びかけたプムズィレ・ムランボ=ヌクカ氏はこう述べています。「不平等があるところには差別と排除が生まれることが分かっています。不平等と闘うには、まず社会の中で見られる負のステレオタイプに立ち向かわなくてはなりません。脱ステレオタイプ同盟は様々な企業を共通の目的のもとに集めているという点でユニークと言えます。広告の力を利用して前向きな文化的変化をもたらし、世界中の女性・少女の生活を向上させようとしているのです」

同同盟が主導した「脱ステレオタイプ:ジェンダーを超えて~目に見えないステレオタイプ~」には南アフリカ、ブラジル、インドで実施された女性・男性の調査が含まれています。それによれば、個人のアイデンティティや状況 ―ジェンダー、年齢、民族、家族状況、宗教、性的指向― をきちんと認識しないために、様々な人が社会で公正に声を上げられない状況を強化することになり、そのために社会の中で女性がますます見えなくなります。この報告書のためにおこなわれた調査はカンヌ映画祭の支援を得て他の国でも実施されることになっています。報告書によれば:

  • 南アフリカでは10人のうち8人の女性が社会で公正に代表されていないと感じ、4分の3がメディアでも公正に取り上げられていないと感じています。半数以上(53%)の白人女性が平等に代表されてないと感じているのに対し、黒人女性の場合この率が81%にも達しています。
  • インドでは半数以上(53%)の女性が社会で公正に代表されていないと感じています。この数字は結婚していない女性で高くなり、18-34歳の未婚の女性に限ると3分の2、62%にも達しています。これは女性が結婚前には大切にされないというステレオタイプが存在することを如実に表しています。
  • ブラジルは社会で平等に代表されていない状況への女性の不満が一番高い(79%)国です。これは未婚女性の間ではさらに高く85%が十分に代表されていないと感じています。さらに4分の3(75%)の女性が、高い幹部の地位に女性が公正についていないと感じ、黒人女性はこの率がさらに上がって80%にも達しています。

ユニリーバのマーケティング広報最高責任者で脱ステレオタイプ同盟副議長のケイス・ウィード氏は次のように述べています。「ジェンダーだけを切り離して取り上げると、人々の多様性を正確に描けなくなります。ジェンダーが民族、性的指向、障害、年齢などの要素と交差していることをよく理解することで、様々なレベルで起こる差別にチャレンジし、社会に前向きな変化をもたらすことができます。

脱ステレオタイプ同盟はそのメンバーが知識や経験を共有するフォーラムとして発展してきており、その核にあるのは協力です。同同盟はその発展過程で、現在でも新しいメンバーを受け入れています。アドビ(Adobe)、オムニコム(Omnicom)、パブリシス(Publicis)、ボーダフォン、欧州広告代理店協会(European Association of Communication Agencies)、 ボストンコンサルティンググループ、ユニセフ、Free the Bid(広告業界で女性を応援する非営利イニシャティブ)、ジェス・ワイナー(Jess Weiner)などです。メンバーの協力で、同盟は目に見える変化を素早く起こそうと活動しています。この協力には以下のものが含まれています。今でも男性は女性の4倍長い時間スクリーンに登場し、3倍長く会話し、7倍言葉を発する機会を得るというジーナ・デイヴィス・メディアとジェンダー研究所とJ.ウォルター・トンプソンによる研究;世界広告主連盟による「広告において先進的にジェンダーを扱うための指針」;女性指数(The Female Quotient)が企業向けに発行した行動ツールキットである「現代における平等へのガイド」;カンタール(市場調査会社)が実施し、AT&T, ジョンソン・エンド・ジョンソン、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ、ダブリュー・ピー・ピー(WPP)が支援している49カ国におけるジェンダー平等に対する態度を測る調査などがあります。

「広告やマーケティング業界は非常に強い影響力を持っているので、世界のジェンダー規範を描く時には大きな責任があります」とマイケル・ロスIPG会長・CEOは述べています。「脱ステレオタイプ同盟は広告業界の効率性を高めるとともに、ジェンダー平等を進めるために我々の力を結集し、ジェンダーの描き方を変えることができます。我々がこの運動にかかわっているのは、インプットとアウトプットを測る時に考えなければならない説明責任が既に含まれているからです。これは我々の仕事の向上とともに職場の多様性に目を向けなくてはならないということです。脱ステレオタイプのミッションのもと、我々はまた単にジェンダーだけを取り上げるのではなく、それと交差する問題も考慮しようと考えています」

同盟は広告業界のステレオタイプ根絶に向けた進歩を測るツールを開発するという目的に向かって前進しています。そしてビジネス慣習を評価するため、UN WomenやUNグローバルコンパクトが開発したすでに実績のある手法、ジェンダーギャップ分析ツールを取り入れることに合意しました。同盟はアメリカで広く使われているGEMTM(ジェンダー平等測定ツール)などを利用して、新しいグローバルな広告測定ツールを開発しようとしています。これはそれぞれのブランドがステレオタイプに取り組み、現在および将来の市場での進捗を測定するのを助けるものです。そのツールは現在テスト段階にありますが、公開する予定なので、どの企業がどの市場、あるいはどのような調査に利用するのも自由です。

「私たちは真の変革を引き起こしています。そしてデータがそれを後押ししています」とAT&Tの最高ブランド責任者であり同盟の副議長であるフィオナ・カーター氏は述べています。「有名ブランドが同盟に加わってくれ、ともに古いステレオタイプを壊し、実際にそれに変わる文化を創り上げているのです。広告主はGEMの点数を改善することで、女性・少女を適切に描く方向に大きく歩を進めていることが分かります。同盟は今日、業界に向けて行動への呼びかけを始めました。これはIPGが作成した映像で、ステレオタイプが引き起こす危険について明確なメッセージを送っています。[https://youtube/ngtO-efwLlw] 「問題は問題を見ないこと」という理解のもとに作成されたこの映像は、ステレオタイプをなくす第一歩としてその問題にしっかり目を向けることを促しています。

これからも同盟のメンバーは1年目の協力と成功の下、①測定ツールをさらに広く採用、実施していく、②エビデンスを広めて啓発する、③この運動を女性・男性を偏見なくありのままに描く方向に展開してメンバーを増やしていくことにこれからも集中していこうとしています。同盟のメンバー全員のリストはここをクリックしてください。here

脱ステレオタイプ同盟とは

脱ステレオタイプ同盟は思考とアクションのプラットフォームで広告を前向きな変革を引き起こし得る社会貢献と位置付け、有害で偏見に満ちたステレオタイプをなくすことを目指しています。同盟は様々な多様性(人種、階級、年齢、能力、民族性、宗教、性的指向、言語、教育)を持つ女性をエンパワーし、ジェンダー平等な世界の実現を助けるために有害な「男らしさ」を取り除くことをその活動の中心に据えていこうとしています。http://www.unstereotypealliance.org

編集後記
この調査は、調査会社であるエデルマン・インテリジェンスが2018年6月1日から6日まで実施したもので、オンラインで3つの市場(ブラジル、南アフリカ、インド)から、年齢、地域、人種、教育、収入に関し人口を代表すると考えられる18歳以上の男女を1000人ずつ抽出して調べたものです。

(翻訳:本田敏江)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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